2013 . 10 . 3

美容医療の神髄本編―美容医療の基本―その5 美容外科診療には形成外科診療の経験が必要なのは説明しました。でも逆に美容外科特有のセンスは?

昨日も今日も他院での不足(不良とは言わないでおきます。)結果の患者さんが来院されます。

本来なら、初療医に診てもらうべきであるという建前はありますが、そこで、まず前医を知ることが必要だと思い尋ねると、「忘れた。」とか、「言わなければならないのですか?。」とかいう人がいて、困ってしまします。病歴は診断に繋がり、治療の方針(こちらが請け負うかも含めて)を左右する重要な所見です。何も情報がなく、ましてや、治療歴があるのに隠されて、こちらは初療だと思って治療したら、思いもよらない状態で難儀したこともありました。ですから、診療の際にはできるだけ情報を下さい。社会的情報も、同様に重要です。

もっとも、「忘れた。」のが、何十年も前だからというのなら仕方ないし、何十年も前に受けた美容整形手術の方法を知っているのは、私だけといえるし、その場合、前医は引退しているわけですから、請け負うことになります。

「言わなければならない?」と言われたら、「別に前医には言いませんから。」といえばたいてい教えてもらえます。どうしても教えたくないという人とは、信頼関係が得られないと考え、そこからは診察を進めない時もあります。

なぜそんなにこだわるのかといいますと、美容医療おいては、スタンダードな方法とそうでないオリジナルと称した方法が混在していて、術後経過が、多彩だからです。そして、特に自費診療では料金もピンキリです。ということは技量もピンキリなのです。ですから、初療医によっては、こちらが治してあげる方がいい場合が多いのです。私達は、それなりのキャリアーがあり、学会等でも多くの美容外科・形成外科医を知っていますので、他医の方法を推察または特定できます。

そこで本題です。他の美容外科医、形成外科医がどんな診療形態をとっているか?。先ず形成外科研修を経た医者と研修していない医者に分類します。

形成外科を研修しないで、卒後すぐに美容外科に入職した医者や、他科からの転向医者が多く在籍するクリニックは、通常チェーン店で、ビジネスに徹しています。そりゃあそうでしょう。内容の不明なテレビコマーシャルや雑誌にカラーで華美な広告をじゃんじゃん打って、クライアントを招く。全国展開しているから、マーケッティング効率は高い。さてそれを誰がこなすのかといえば、ベテランなんか使っていられるわけがなく、上記のような医者をこき使い、数だけこなさせる。そうしなければビジネスモデルが成り立たないそうです。例えば、重瞼術は埋没法に誘導して、カウンセリングは医師でなく、(診察とは言いません。)医師は手術の直前にブジーを当てて、鏡を見せて、「ハイッ、これでいきましょう。」と言い、一瞬の診察で手術は15分刻みでこなすのです。患者さんは取りつく島もなく、帰される。患者さんは「なんだったんだろう?」と思うそうです。ある程度時間が経てみて、今度は「思っていたのと違うなァ~?。なんか変な話。」っと、感じて、どうにかできないか悩み、インターネットで調べ始めるのです。そこで選択のポイントはやはり、形成外科専門医で、美容外科のキャリアーが5年はあるというところでしょうか?。当院にはよく来院されます。そこで、念入りに診察し、様々な観点から、多くのレパートリーの中から、再治療の選択肢を提示していきます。こうして行われた治療は患者さんに安堵を与えるのです。やはり、まじめな美容医療をしていてよかったと思う一刻です。

形成外科出身の美容外科医は、おおむねスタンダードな医療をします。前回述べましたが、顔面身体体表の解剖、生理、機能を学んできているので、おのずから治療の方法は理にかなったものになります。ただし、美容的に患者さん個々の希望に合った、そして美容的にいい結果を出すことにかけては不足(医学的には不良でない)な施行医がいらっしゃいます。ここが問題で、形成外科医療は疾病を対象としますので、治療法が限定的なので、医療者からの押し付けになりやすいのです。それはそうですよ、病気、傷害は治るか治らないかですから、形態的美容的な配慮が為されるといっても、治療選択肢は狭い訳です。形成外科医が、美容外科診療に手を付け始めた際に、この面での発想の転換が必要になると思います。美容外科診療では、患者さんにとっては危急性は少なく、また患者さんの今ある形態的状態、つまり顔の質はピンからキリまであります。そこに何を、どの程度付け加えたいか、どの部分をどの程度取り戻したいかは、患者さんの決めることです。そこでの私たち医者は、それぞれの面に選択肢を示し、またはバランスを考えて、順位を示したりするべきです。経済性や社会的な適応も配慮するべきです。前回述べましたが、形成外科医は解剖、生理機能等をよく勉強していますが、勉強したことしかできないので、応用が利かないのかもしれません。スタンダードな治療というのはそういうものでしょうか?。本当のスタンダードは患者さんの状態に合致しているという意味で患者さんにとってのスタンダードであるべきだと思います。それが美容医療の肝なのではないでしょうか?。

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